「今を楽しむ力」──60代からの学び直しが、人生をもう一度おもしろくする

シニアライフ

はじめに:過去にこだわらず、今を生きるという選択

「昔は部長だった」「あの頃は70台で回ってた」「理事長杯で優勝したこともある」

——そんな“かつての自分”を誇らしく語りたくなる気持ちは、私にもあります。
でも、ある日ふと思いました。

それって、今を楽しんでいない証拠じゃないか?

年齢を重ねれば、過去は増えていきます。
けれど、「今を生きている」という実感がなければ、過去はただの思い出でしかない。

60代の今、私はあえて“もう一度ゼロから学び直す”という道を選びました。今回は、バイク、ゴルフ、そして仕事という3つのテーマで「学び直しの楽しさ」を綴ってみたいと思います。


1. 大型バイク免許で気づいた「知っているつもり」の落とし穴

50代後半、私はふと思い立って大型自動二輪免許の取得に挑戦しました。

若い頃に中型バイクには乗っていたので、「まあ、感覚は残ってるだろう」とたかをくくっていたんです。ところが、教習所に通ってすぐ思い知らされました。昔の感覚では、通用しない。


一本橋で足をつき、クランクで脱輪

一本橋でバランスを崩し、スラロームでタイムオーバー、クランクでは何度も脱輪し、注意されるたびに心が折れそうになりました。しかし、よく観察すると、教習内容はすべて理にかなっていたのです。ニーグリップ、目線、クラッチとリアブレーキの連携。一つひとつに意味があり、安全と操作性を両立するよう、きちんと設計されている。昔のような“感覚任せの乗り方”では、今の時代のバイクには合わない。「自分は知っている」という思い込みを捨てたとき、成長が始まりました。


そして、大型バイクと旅へ

まあまあ苦労の末、無事に大型二輪免許を取得。今ではホンダX-ADV750に乗り、全国を旅するようになりました。でもこれは、“かつての趣味の延長”ではありません。**まったく新しい技術を身につけ、新しい気持ちで始めた「今の自分の旅」**です。過去の感覚を手放したからこそ、手に入った自由でした。


2. ゴルフ──スイングを捨てて、100切りを喜べる自分へ

私は以前、クラブハンディ5のシングルプレーヤーでした。年間60ラウンド以上をこなし、70台のスコアも珍しくなかった。クラブ競技にも出場し、理事長杯で優勝した経験もあります。まさに“ゴルフが自分の一部”だった時代。


ところが、あのスイングが今は通用しない

久々に本格的に再開したゴルフで、私はショックを受けました。昔のように振っても、球は飛ばない、曲がる、疲れる。道具は進化し、理論も変わり、何より自分の体も変化している。
昔の成功体験にすがっている限り、前には進めない——そう悟ったのです。


スイングを一から組み直すことを決意

そこで私は、すべてをゼロからやり直すことにしました。グリップ、アドレス、スイング軌道、体重移動、タイミング……すべてを見直すために、YouTubeで最新理論を学びながら、インドアゴルフ練習場に契約し、定期的に通っています。

室内練習場では、スイング軌道やヘッドスピードなどをデータで可視化でき、“昔の感覚”では見逃していた癖にも気づけるようになりました。


100切りでガッツポーズ——今の自分で取ったスコア

数ヶ月の試行錯誤の末、ある日なんとか100を切ることができました。かつての自分なら笑っていたかもしれないスコア。でも今の私は、本気で嬉しかった。

「過去の自分」ではなく、「今の自分の力」で出したスコアだったから。過去を引きずらないことで、ゴルフは再び“楽しいスポーツ”になったのです。


3. 仕事もまた、学び直しが必要な時代

今から40年近く前、私が会社員だった頃は、FAXや紙の資料、電話でのやりとりが当たり前でした。キャリアを積んだ40代には、部下を動かし、会議を仕切り、紙の書類を前に指示を出すのが日常でした。

しかし今や、仕事の現場は激変しています。Zoom、Slack、SNS、クラウド共有、AI──一人ひとりがデジタルを使いこなす時代です。

私は当時、コンピューター業界に身を置き、むしろ最先端の流れの中にいました。デジタルに対して苦手意識などなく、むしろ「得意なほうだ」と自負していたのです。

けれど、60代になってから通ったバイクの教習所では、そんな自負が音を立てて崩れました。交通ルールも教習内容も、私の記憶にあるものとはまったく違っていたのです。

そのとき感じたのは、「知っているつもり」が一番の敵だということでした。

この気づきは、やがてゴルフの学び直しにもつながりました。そして今では、ChatGPTを活用し、YouTubeで動画を作り、ブログも運営するようになりました。どれも、“かつてのやり方”では通用しない、新しい世界との向き合いです。

時代は常に変化しています。過去の成功体験にしがみつかず、自分を柔軟にアップデートしていくこと──それこそが、人生後半を生きる上での大切な力だと、私は実感しています。


結論:「アンラーン=手放すこと」が、人生を楽しくする

学び直しとは、単に新しい知識を得ることではありません。
「これまでの自分」をいったん手放すこと。

・昔のスイング
・昔のバイク操作
・昔の仕事術

これらを誇るのではなく、感謝して一度手放す。
そのうえで、今の自分にとって必要なことを、素直に吸収する。それこそが、人生を“今”楽しく生きるための最大のコツだと感じています。


おわりに:「今この瞬間が、一番若い」

人生には、いくつになっても“スタートライン”があります。
60歳でも、70歳でも、今日という日は「これからの人生で一番若い日」です。

過去にこだわらないことで、今の自分でバイクに乗り、今の自分でゴルフを楽しみ、
今の時代に合った仕事の仕方を身につける。それは、「今を楽しむ力」そのもの。

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