理念は企業だけのものじゃない。60代からの生き方にこそ“パーパス”が必要だ

シニアライフ

はじめに──理念は「企業だけのもの」なのか?

最近、アウトドアブランド「パタゴニア」が会社そのものを“地球を守るための仕組み”に変えたというニュースが話題になりました。創業者は全株式を手放し、その利益は気候変動や自然保護のために使われる。彼らはこう言います──

“We’re in business to save our home planet.”
「私たちは、地球という私たちの故郷を守るためにビジネスをしているのです。」

この話を聞いたとき、私は「これは企業の話だけじゃない」と直感的に感じました。理念(パーパス)は、会社の経営だけでなく、私たち一人ひとりの生き方にも必要なものなのです。

私自身、50代に入ってから、人生の“舵”を自分で握る感覚を取り戻し始めました。そしてその背景には、明確な「なぜ?」=パーパスがあったと、今ならはっきり言えます。

本記事では、「理念があることがなぜ大切なのか?」を、パタゴニアの事例と、私自身の実体験──旅、YouTube、やめたこと──と重ねながら深堀りしてみたいと思います。


第1章:パタゴニアに見る“理念が会社を変えた”話

パタゴニアは、ただのアウトドアブランドではありません。サステナビリティを徹底し、「1% for the Planet」「修理して使うカルチャー」「環境保護団体への寄付支援」など、社会に対する責任を行動で示してきました。

2022年、創業者イヴォン・シュイナード氏は、その集大成として株式の100%を「地球のための信託」と非営利団体に譲渡。これによってパタゴニアは、誰かの私利私欲ではなく「地球のため」に存在する企業になりました。

この行動は、ビジネス界に大きな衝撃を与えましたが、私はふと、こんな風に思ったのです。

「自分の人生にも“誰のために・何のために”があるか?」

そして、人生の後半にこそ、この問いは重要になってくるのです。

企業は理念によって持続可能な形に生まれ変わることができます。同様に、個人の人生も、理念という芯があれば、他人の価値観や世間のノイズに惑わされず、自分の意思で進むことができるのです。


第2章:理念がないと、流される──会社を辞めて気づいたこと

私は49才まで、会社役員を務めていました。人の期待に応えるのが仕事であり、それなりの収入もありました。

けれどあるとき、心の中に空白が広がっていくのを感じたのです。

「このまま、期待に応える人生で終わっていいのか?」

退職を決めたとき、自分に問いかけたのは、「これから何をしたいのか」ではなく、**「なぜ、それをしたいのか」**という問いでした。

それは、まさに“理念”を自分の中に見出す作業だったように思います。

世間体や名刺の肩書き、銀行口座の残高──そういったものが「人生の充実度」だと信じ込まされていた自分にとって、「自分は何者か?」という根本の問いは、正直とても怖いものでした。

でも、怖いからこそ、立ち止まり、自分と向き合うことができた。理念は、いわば“人生の地図”。それを持たないまま歩くことの危うさを、私は身をもって体感しました。


第3章:60歳からの再挑戦──大型バイク免許が教えてくれたこと

60歳を過ぎてから、私は大型二輪免許を取りました。きっかけはコロナ禍です。感染して回復したあと、気力が湧かず、何も楽しく感じられない日々が続いていました。

そんなとき、バイクという新しい選択肢が浮かびました。

若い頃に憧れていたもの。今やるには体力も落ちてきている。でも、やるなら今しかない──そう思ったのです。

教習所では何度も失敗しました。でも、“できない自分”を受け入れ、“新しい自分”を少しずつ見つけていく過程は、単なる免許取得以上の意味がありました。

それは「自分を再起動する」プロセス。

この挑戦を通じて私は、「何かを新しく始めることは、自分の理念を形にする行為なのだ」と実感しました。

バイクは、単なる乗り物ではなく、自分の意思で行き先を決め、人生のハンドルを握る象徴でした。


第4章:「やめる」ことで人生は軽くなる

私が50才までにやめたことは、どれも「他人の期待」や「惰性」で続けていたものでした。

  • 無理な人間関係
  • 飲酒・喫煙
  • 見栄やプライドでの出費
  • 完璧主義

それらを手放したことで、“自分の人生を自分で選ぶ”感覚が戻ってきたのです。

中でも象徴的だったのが「卒煙」。ヘビースモーカーだった私が、ある時「タバコを吸う権利なんて、バカと貧乏人にくれてやれ」という言葉を知った瞬間、ふと自分の姿が客観視できてしまったのです。

やめるとは、「今の自分にとっての理念」に合わないものを削ぎ落とすことでもあるのです。

◎理念で選ぶ車、という視点

たとえば私にとっての「車選び」も、今では理念のひとつの表れです。

若い頃のように、燃費やスペック、値引き率で判断するのではなく、 **「この車とどんな時間を過ごすのか?」**を想像して選ぶようになりました。

所有より体験。 馬力より安心感。 スピードより、自由。

人生の時間をどう過ごすか── その答えが理念であり、車はその理念を運ぶ“移動する居場所”なのです。

車の中で聞く音楽、助手席に誰を乗せるか、どんな道を走るか──それはすべて、「どんな人生を走りたいか」という問いとつながっています。

そして私がいま乗っているスバル・インプレッサスポーツを選んだ理由も、まさに“理念”に基づいたものでした。

スバルが掲げる目標の中で最も感銘を受けるのが、**「2030年に死亡交通事故ゼロを目指す」**というビジョンです。この壮大な目標に向けて、スバルは長年にわたって安全性能を妥協せず追求しています。

単にスペックが高いとか、スタイルが良いという理由ではなく、**「自分や大切な人の命を守るための思想」**があるからこそ、私はスバルを選びました。

クルマ選びは、人生観の表現です。理念に共鳴するメーカーの思想とともに日々を走る──それが、これからの時代における“選び方”の本質かもしれません。


第5章:「理念」は一人ひとりの中にある

パタゴニアのようなグローバル企業だけでなく、小さなチーム・サークル・個人活動にも理念は不可欠です。

むしろ個人こそ、理念がないと流されやすい。だからこそ「なぜ自分はこれをやるのか?」を問い続けることが、自分の人生をつくることにつながるのです。

私の場合、理念はこう言語化できます:

「人生の後半を、自由に、軽やかに、自分らしく生きたい人の道しるべになる」

だから、旅をする。記録を残す。動画を発信する。人とつながる。

すべてがこの“パーパス”に沿っているのです。

理念があるからこそ、「発信する」という行為が自己満足ではなく、「誰かの背中を押すためのもの」になればうれしいと考えているのです。


第6章:「理念がある」ことがもたらす5つの効果

  1. 判断が早くなる ──何をやるか・やらないかの基準になる
  2. 迷いが減る ──外からの声に振り回されにくくなる
  3. 続けられる ──困難を乗り越えるエネルギー源になる
  4. 共感が生まれる ──同じ方向を見る仲間が集まりやすくなる
  5. 行動が美しくなる ──生き方に一貫性が出る

これは実際に、私がYouTubeやブログで実感してきたことです。

理念は羅針盤であり、エンジンでもあります。迷ったときはそこに立ち返り、歩みを続けられる。


第7章:理念と共に進むこれからの時間

理念は「過去を整理するための言葉」でもあり、「未来を選び取るための羅針盤」でもあります。

人生の後半に差しかかると、体力や時間には限りが見えてきます。しかし、その限りある時間だからこそ、自分が本当に望むことに集中するチャンスなのです。

理念を持つと、やらなくてもいいことがどんどん見えてきます。そして、逆に「これはやるべき」と自然に思えることにエネルギーを注げるようになります。

バイク旅で出会った人、ブログでつながった読者、動画に反応をくれた仲間たち──そうした人との関係も、理念を持っているからこそ、より深く、よりあたたかいものになるのです。

自分にとっての“目的ある時間”をどう過ごすか。 それが、60代以降の人生をどう彩るかを決めていきます。


おわりに:人生の後半こそ“理念”を持って生きる

理念とは、外から与えられるものではありません。

経験や葛藤、やめたこと・始めたこと──その積み重ねの先に、自然と浮かび上がってくる“自分だけの言葉”です。

だからこそ、人生の後半にこそ理念は必要なのです。

あなたは、なぜその旅に出るのですか? なぜ、その動画を撮るのですか? なぜ、その人とつながるのですか?

それに答えられるようになったとき、人生は一段と自由になります。

理念とは、自分の人生に“芯”を通す行為。

そしてそれは、いつからでも、誰にでも始められる生き方です。

人生のパーパス、見つけてみませんか。

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