日本のビールCMはなぜ“ゆるすぎる”? 海外のアルコール広告規制と比較して考える

お金

〜海外の広告規制と日本の現状を比較して考える〜

テレビで流れるビールのCM。グラスに注がれたビールが泡立ち、笑顔で乾杯を交わす人々。こうした光景は日本では当たり前のように目にしますが、実は世界的に見ると、これはかなり“緩い”状況だと言えます。


欧米の広告規制の実例

フランス:エヴァン法による厳格な制限

1991年に制定されたフランスの「エヴァン法(Loi Évin)」では、テレビ・映画・雑誌などのメディアでアルコール広告に対する厳しい規制が設けられています。飲酒を美化するような表現(楽しさ・性的魅力・味の描写など)は禁止され、必ず健康への警告文を表示しなければなりません。

ノルウェー・スウェーデン:原則広告禁止

これらの北欧諸国では、アルコール広告はほぼ全面禁止です。特にテレビやネットなど広範なメディアでの広告は、若者への影響を最小限に抑えるために法律で禁じられています。

ノルウェーにおけるアルコール広告規制  SHAAP(シャープ)スコットランド・アルコール問題に関する健康行動団体

アメリカ:自主規制と公共の場での飲酒制限

アメリカでは、法的な広告禁止には至っていませんが、大手企業は業界団体のガイドラインに従い、自主的に広告表現を制限しています。例えば「飲酒シーンを直接描かない」「21歳未満を対象とした広告は行わない」などがその一例です。

さらに、アメリカの多くの州では公共の場での飲酒自体が禁止されています。そのため、映画などでよく見る「紙袋にビール缶を隠して飲む」シーンは、実際の生活に即した描写であり、酒を公然と持ち歩くことへの社会的制限を象徴しています。

その他の国々の事例

  • シンガポールでは、公的な場での飲酒は夜間(22:30~7:00)に厳しく禁止されています。
  • タイでは公共の場での飲酒は厳しく規制されており、違反者には罰金が科されます。
  • インドの一部州ではアルコールそのものが禁止されています。

このように、アルコールの「公共性」や「見せ方」に厳しい規制を設けている国は少なくありません


一方、日本は…

それに引き換え、日本ではアルコールに関する規制は非常に緩やかです。

公共の場での飲酒も基本的には禁止されておらず、コンビニで購入した缶ビールをその場で開けて飲む姿も特に問題視されることはありません。花見や夏祭り、海水浴など、屋外イベントでもアルコールは自由に楽しめるものとして広く容認されています。

また、テレビCMやインターネット広告では、泡立つビールを美味しそうに注ぎ、仕事終わりに笑顔で乾杯するシーンが日常的に流れています。これらの表現は、知らず知らずのうちに「酒は楽しい」「日常のご褒美」「大人のたしなみ」といった間違った価値観を社会に深く刷り込んでいます。

しかし、こうした無意識の“酒礼賛”文化こそが、未成年の飲酒、依存症、飲酒運転、そして家庭内トラブルや健康被害を引き起こす背景になっているのではないでしょうか。

この点において、日本は欧米や一部アジア諸国と比べて、あまりに寛容すぎるのが現状です。

「飲みにケーション」が生むアルハラ

日本独自の文化として根強く残るのが「飲みにケーション」という考え方です。飲酒を通じて人間関係を深めようとする行為自体は悪くありませんが、問題はそれが強制されたり、断れない空気を生んでしまう点にあります。

「飲めない人に酒をすすめる」「付き合いを断ると評価が下がる」「体調が悪くても断れない」──これはもう立派なアルコール・ハラスメント(アルハラ)です。

若者の中には、「飲み会に価値を感じない」「飲みにケーションに意味を見出せない」という声も増えており、もはや時代錯誤の文化となりつつあります。


アルコールが健康に与える影響

世界保健機関(WHO)はアルコールをグループ1の発がん性物質と分類しています。特に、口腔、咽頭、食道、肝臓、乳房などのがんリスクを高めることが報告されています。また、日本国内の研究でも、アルコール摂取量が多い人ほど死亡リスクが上がることが確認されています。

WHOによる「アルコールはグループ1の発がん性物質」などは、IARC(国際がん研究機関)による報告

被害の現実

  • 酒のせいで命を落とした人がいます 
  • 大切な人を失った遺族がいます
  • 酒が原因で仕事や家庭を失った人も数知れず

【アルコールによる死亡者数】

  • 世界では、2019年に約260万人が飲酒が原因で死亡しています。
  • 全死亡者の4.7%を占めています。
  • アルコールによる死亡者のうち200万人と薬物による死亡者のうち40万人が男性でした。

【アルコール依存症の患者数】

  • 日本国内のアルコール依存症の患者数は、約80万人以上といわれています。
  • 予備軍も含めると約440万人にもなると推定されています。
  • 依存症は本人も気づいていないことが多いため、患者さんの数と治療者数の間に大きな差が生じています。

【アルコール依存症が家族に与える影響】

  • 家族は依存症者の行動に振り回され、精神的に疲れ果ててしまいます。
  • 不安、恐れ、無力感を感じやすくなり、時には怒りや絶望に支配されることもあります。
  • 依存症者が仕事を失ったり、医療費や治療費がかさむことにより、家庭の経済が圧迫されることがあります。その結果、離婚や一家離散といった深刻な家庭問題を引き起こすこともあります。

その一方で、酒を飲んで楽しむ人や、酒を売って利益を上げる産業がある──この裏にある被害者の存在を、社会は見過ごしてはいけません。

飲まされている人たち

「酒が好き」という人の中には、本当に好きで飲んでいるのではなく、依存症として「飲まされている」(依存症により“自分の意思ではやめられない”という状態)人が多くいます。それはもはや嗜好ではなく、病的な状態です。

認知症との関連性

高齢化が進む今、認知症も増えています。その要因の一つとして慢性的なアルコール摂取が挙げられ、アルコール性認知症のリスクも広く知られるようになっています。


自動車と酒──社会への貢献の違い

危険性のあるものがすべて悪ではありません。たとえば自動車は、人を殺してしまう可能性を持ちつつも、社会や経済の基盤を支える重要な道具です。

一方、アルコールはどうでしょう?

  • 社会的貢献は限定的
  • 健康被害や家庭崩壊の原因となる
  • 依存性と暴力性が高い

タバコ以上に有害なアルコールが、なぜ未だに社会で歓迎され、CMで美化されているのか──私たちは考え直すべき時に来ているのではないでしょうか。


日本でも広告規制を導入すべき理由

こうした背景を踏まえ、私は以下の提案を強く主張します:

  • テレビやYouTubeなどでの飲酒シーンの使用禁止
  • アルコール広告に健康リスクの警告表示を義務づける
  • 「酒は楽しいもの」という過剰演出の規制
  • 飲まない生き方を推奨する教育の推進

そして、もし本気で日本が医療費の負担を減らしたいのであれば:

タバコを禁止する前に、酒を禁止すべきです。

飲酒がもたらす健康被害、社会的損失の大きさを見れば、それは決して極端な提言ではないと私は考えます。


まとめ:酒を飲まない選択をしてみませんか?

お酒を完全に否定するわけではありません。けれども、これまで当たり前だと思っていた“酒のある暮らし”を、一度立ち止まって見直してみる──そんな「選択」こそが、これからの時代にふさわしいのではないでしょうか?

無理に飲まないというよりも、「あえて飲まない」という意志ある選択。

酒による健康被害や社会問題を減らすためにも、まずは一人ひとりの意識から。

酒を飲まない選択をしてみませんか?

この問いかけが、あなたとあなたの周りの人の未来を変える小さな一歩になることを願って。

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