ある学びの場でこの本の存在を知り、「これは今の自分に必要だ」と感じてすぐに購入しました。読んでみると、シンプルでありながら実践的な内容に驚き、すぐに仕事でも使いたくなるアイデアが詰まっていました。
「ついついアドバイスをしてしまう」「忙しくて、部下の話をじっくり聴く余裕がない」「1on1がただの業務報告になっている」
そんな悩みを持つマネージャーやリーダーにこそ読んでほしい一冊が、マイケル・バンゲイ・スタニエ(Michael Bungay Stanier)による『リーダーが覚えるコーチングメソッド』です。
この本は、コーチングを「たまの特別な技術」ではなく、「日々の習慣」にするための実践書です。しかも、たった7つの質問を覚えるだけで、誰でも明日からコーチングができるようになる──そんなシンプルかつパワフルな内容になっています。
この記事では『リーダーが覚えるコーチングメソッド』の核心である7つの質問とその活用法について、わかりやすく解説します。
- なぜ「コーチング」が今、必要なのか?
- 7つの質問とその活用法
- 1. What’s on your mind?(何が気になっていますか?)
- 2. And what else?(他には?)
- 3. What’s the real challenge here for you?(あなたにとって本当の課題は何ですか?)
- 4. What do you want?(あなたは何を望んでいますか?)
- 5. How can I help?(どうすればお役に立てますか?)
- 6. If you’re saying yes to this, what are you saying no to?(これにイエスと言うなら、何にノーと言うことになりますか?)
- 7. What was most useful for you?(今日の会話で一番役に立ったのは何ですか?)
- 7つの質問をどう使うか?組み合わせのコツ
- おわりに:質問は「相手の可能性を引き出す鍵」
なぜ「コーチング」が今、必要なのか?
著者のマイケルは、「マネージャーの多くは“アドバイスモンスター”になってしまっている」と警鐘を鳴らします。つまり、相手の話を最後まで聴かず、すぐに「こうすればいい」と解決策を提示してしまうのです。
しかし、それでは相手の主体性は育たず、マネージャー自身も疲弊していきます。だからこそ必要なのが、「質問することで相手に考えさせる」コーチング的な関わり方です。
そしてそれを日常の会話に落とし込むには、「習慣」として根付かせることがカギになります。

7つの質問とその活用法
1. What’s on your mind?(何が気になっていますか?)
この質問は、「最近どう?」の代わりに使うキックスタート・クエスチョンです。「今、一番重要なこと」にフォーカスすることで、雑談ではなく、本題にすぐ入ることができます。
使い方の例:
- 「チームについて何か気になることある?」
- 「プロジェクトで今、一番悩んでるのは何?」
ポイントは「沈黙を恐れない」こと。相手が話し始めるまで待つ姿勢が大切です。
2. And what else?(他には?)

マイケルが「魔法の質問」と呼ぶこの問いは、相手の思考を深める力があります。
なぜなら、最初に出てくる話は本質的な課題とは限らないからです。「他には?」と繰り返すことで、隠れていた本音やアイデアが引き出されていきます。
目安:3回まで繰り返してOK。
3. What’s the real challenge here for you?(あなたにとって本当の課題は何ですか?)
「問題は山のようにあるけど、結局のところ、何が一番の課題なんだろう?」
この質問のポイントは、「for you(あなたにとって)」という部分。チーム全体の問題ではなく、その人自身にとっての核心を明確にする問いです。
これにより、自責思考を促し、課題の本質が見えてきます。

4. What do you want?(あなたは何を望んでいますか?)
「どうしてほしい」ではなく「自分はどうしたいのか」を問うことで、自分のニーズや願望を言語化できるようになります。
これは会話を建設的にし、相手の主体性を引き出す上で非常に効果的です。
5. How can I help?(どうすればお役に立てますか?)
リーダーとしてついやってしまいがちな「過剰な手助け」。
この質問を使うことで、相手に主導権を持たせつつ、自分がどう支援できるかを明確にすることができます。
サポートの質を高める上で、極めて重要な問いです。

6. If you’re saying yes to this, what are you saying no to?(これにイエスと言うなら、何にノーと言うことになりますか?)
意思決定の質を高めるために欠かせない「トレードオフ」を意識させる質問です。
「何かを引き受ける=何かを手放す」こと。これを明確にすることで、優先順位の判断がしやすくなります。
7. What was most useful for you?(今日の会話で一番役に立ったのは何ですか?)
学びを定着させるための「ふりかえり」の質問です。相手自身が気づきを言語化することで、その内容が脳に残りやすくなります。
また、フィードバックとして、自分のコーチングがどう響いたかも確認できます。
7つの質問をどう使うか?組み合わせのコツ
これらの質問は、必ずしも順番通りに使う必要はありません。
たとえば、
- 会話の冒頭:What’s on your mind?(何が気になっていますか?)
- 話を掘り下げたいとき:And what else?(他には?)
- 優先順位を明確にしたいとき: If you’re saying yes to this, what are you saying no to?(これにイエスと言うなら、何にノーと言うことになりますか?)
状況に応じて、柔軟に使い分けるのがポイントです。
おわりに:質問は「相手の可能性を引き出す鍵」
この『リーダーが覚えるコーチングメソッド』の7つの質問は、どれも簡単で短いものばかりです。
しかし、それらを習慣化することで、部下や同僚との関係が大きく変わります。
一方的に話すのではなく、問いかけて、聴いて、引き出す。
それが本当に信頼されるリーダーの第一歩です。



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