渋沢栄一の曾孫が語る、いま私たちに本当に必要な生き方と経済観
【はじめに】
ある経営者の集まりで、渋沢栄一さんの曾孫にあたる方の講演を聞く機会に恵まれました。
語られた言葉は静かに、しかし力強く、私たち一人ひとりに「今、何を大切にすべきか」を問いかけてくるものでした。

【1. 理不尽への怒りが渋沢栄一を動かした】
百姓の身分に生まれた渋沢は、幕府から理不尽な御用金を命じられます。
顔も知らぬ殿様の娘の婚礼のために、貯めたお金を差し出すことに疑問を持ちます。
「なぜこんな不公平が通るのか?」
その憤りが、討幕という行動へと彼を駆り立てました。
【2. パリで出会った「株式会社」】
パリ万博に随行した渋沢は、株式会社という仕組みに出会います。
王族ではなく、民間人たちが出資し合い、大工事を行っている。
「これが未来の社会の形だ」と確信した彼は、帰国後、新たな社会構築に取り組みます。
【3. 経済・福祉・教育の三本柱】
政府職を辞し、30代で民間に転身した渋沢は、銀行、鉄道、大学、福祉団体など、500以上の企業と600以上の社会事業を立ち上げます。
特筆すべきは、経済・教育・福祉を同時に育てていた点です。
彼にとって社会とは、「稼ぐ」ことだけではなく、「育て、支える」ものでもあったのです。
【4. 江戸の循環型社会に学ぶ】
講演では、江戸の「ゼロカーボン社会」にも触れられました。
排泄物を肥料に、紙くずや灰、古着もすべて再利用。
モノは徹底的に使い切るのが常識でした。
徒歩圏で100万人の都市を支える、持続可能な都市運営が、江戸では実現していたのです。
【5. 労働生産性より「資産性」】
現代では「労働生産性」が価値の基準とされていますが、江戸では「資産性」——つまり、モノをいかに長く使うかが重視されていました。
壊れたら直して使う。
それこそが、当時の豊かさの証だったのです。
【6. 合本主義=信用の経済】
渋沢は「資本主義」という言葉を避け、「合本主義(がっぽんしゅぎ)」と呼びました。
「信用があれば、お金はあとからついてくる」
この言葉が表すように、彼が最も大切にしていたのは「信頼」でした。
信用こそが、人・組織・社会をつなぎ、経済の土台となる。
それが彼の哲学でした。
【7. 自分に問いかけたこと】
この講演を聞いて、私は自分にいくつか問いを投げかけました。
- 自分は、物を無駄にしていないだろうか?
壊れたらすぐ捨てて買い直していないか。
「もったいない」の精神を忘れていないか。 - し尿は今、どうなっているのだろうか?
江戸では資源だった排泄物が、現代ではどう処理され、どう扱われているのか?
私たちは便利さの中で「循環」を忘れてしまっているのではないか?
こうした「足元を見る視点」こそ、これからの持続可能な社会には欠かせないのだと思います。

【おわりに】
渋沢栄一の思想は、単なる経済論ではありませんでした。
**「どう生きるか」という人生観であり、「誰と生きるか」**という人間観です。
お金や効率ではなく、信用・循環・共生。
それが、未来の世代に残すべき価値なのではないかと、強く感じました。



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